今年も朝の冷たい空気を吸い込みながらジムへ向かう日々が続いた。
冬の始まりは特に体が重く、布団のぬくもりに負けそうになる。
それでも、リングに立つ自分を想像すると、不思議と足が前へ動く。
格闘技を始めた頃はただ「強くなりたい」という気持ちだけだったが、
今年はその意味が少し変わってきた気がする。
春の大会で、思うように動けなかった。
練習では出せていた技も体力も、本番の緊張に押しつぶされてどこかへ消えてしまった。
判定負けを告げられた瞬間、悔しさと情けなさで胸が熱くなり、何も言えなかった。
あの日だけは自分が大嫌いだった。
負けってこんなに重いのか、と帰り道で何度も思った。
けれど、数日たつと、悔しさの奥に小さな火が残っているのに気づいた。
まだやれる、もっと強くなりたい、次は必ず勝ちたい。
その気持ちが今年の後半の自分を動かすエンジンになった。
練習量も増やし、苦手なスタミナ強化にも本気で向き合った。
スパーリングでボコボコにされる日もあったが、不思議と以前のように落ち込みすぎることはなかった。
負けを経験した分、心が少し強くなったのかもしれない。
夏頃にはトレーナーにも「動きが変わったな」と言われ、
自分でも成長を実感できる場面が増えた。
ミットを打つ音が前よりも深く響き、足さばきも軽くなった。
練習後に汗を拭きながら、「俺はまだまだ伸びるんだな」とふっと笑えた瞬間が嬉しかった。
しかし秋になり、また壁が来た。
思った以上に結果が出ない。
成長しているはずなのに、試合に繋がらない。
そんな自分に腹が立ち、焦りも出た。
練習中にイライラしてしまい、同じジムの仲間に当たってしまいそうになる自分が嫌だった。
強くなるほど心も安定すると思っていたが、むしろ気持ちが乱れることの方が多かった。
それでも冬の始まり、ふとした瞬間に気づいた。
“強さ”って勝敗だけじゃない。
逃げずに続けていること、負けてももう一度立ち上がろうとしていること、
その積み重ねが自分を強くしているんだと。
そう思えた時、心の重さが少し軽くなった。
今年一年、勝てた試合よりも、苦しくて逃げたくなった日の方が多かった。
でも、その全部を越えて、今の自分がいる。
来年の自分は、今日の努力の先にしか現れない。
リングの上で胸を張れるように、まだ見ぬ“強い自分”に会えるように、これからも拳を握り続けたい。